治療方法や目標を設定を行ううえでの考え方としてSDM(shared decision making)というコンセプトがあることをご存知でしょうか。
日本語では、
共有意思決定
と訳されます。
1990年代後半までは治療の方針や目標設定などの合意形成は医師をはじめとした医療者に委ねられてきました。
これが父権主義(パターナリズム)と呼ばれるものですね。
このパターナリズムには…
医療者であれば患者にとって最善の選択を行ってくれるであろう
という期待のような考えが根底にあったわけですね。
ただパターナリズム的医療の下では非人道的な決定も多々行われてきた事実があります。
第二次世界大戦ではたくさんの犠牲者を出すなど医療者だけに治療の決定が委ねられているという事実が医療が発展するにつれて疑問視されるようになってきたわけですね。
そしてその後インフォームドコンセントが医療者の努力義務であるとされるようになりましたね。
ただこのインフォームドコンセント(IC)も医療者側から一方的に説明されるだけで患者の意思があまり反映されにくいという問題も出てきました。
そして現在のSDMに至ったという流れとなっています。
そもそもSDMの定義とは何かというと…
「臨床的エビデンスに基づく治療の選択肢と各治療のメリットとデメリットを提示し、患者の価値観や希望、状況を踏まえたうえで、患者と医療者が共に治療を決定する過程」
『PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法』P88
要するにSDMとは…
患者と医療者が一緒に治療を決定する過程
ということですね。
このSDMをリハビリテーションの分野で本気で実践しようと思うと
- セラピスト
- 患者さん
- 医療制度
に理解が必要ですね。
まずセラピストには相当能力が求められますね。
医療人として知識をアップデートし続けることが重要でしょう。
そうでないと治療の選択肢などを患者さんと共有できない。
また理学療法士は私を含め機能障害や活動面など相手のできないところばかりに目を向けるクセが職業病として染み付いてしまっています。
その染み付いたネガティブな見方をポジティブな見方に変える力が必要だと思います。
そして患者さんにもこれまでのように医療者が治療方針や目標を全て委ねるのではなく自立することが大事だということを知る必要があるでしょう。
また患者さんにもそれなりの判断力やコミュニケーションスキルは必要になりそうですね。
医療制度も現状のままではSDMの浸透は厳しいかもしれません。
病院側が利益主義に走りすぎている状況では患者さんとリハビリ提供者である理学療法士などが一緒に治療方針や目標を決定するというのはちょっと難しい。
セラピストもサラリーマンで雇われですので長いものには巻かれてしまいやすいです。
何よりセラピストの立ち位置の改善も必要でしょうね。
例えば病院によってはセラピストが治療者というよりも「単位を稼ぐマシーン」のように扱う施設ではセラピストに余裕がなく自尊心も生まれにくいでしょうからSDMみたいな高度な概念は定着しにくいかと思います。
書き進めるとネガティブな感じになってしまいました。
確かに完璧なSDMを行おうと思うと壁は高いように思います。
ですがいきなり完全を目指すことは何事においても無理というものです。
まずは私たちセラピスト側かSDMというコンセプトを少しでも日々の臨床に取り入れようとしていかなくては始まらない。
SDMを日々の臨床で取り入れようと思うと夢物語のように感じる方もいるかもしれません。
ですがこの変化の著しい時代に仕事をしているセラピストであるならば最低限考え方は知っておきたい考え方ですね。
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