はじめに
整体院や治療院、リラクセーションをやっているお店って本当に増えてきていますよね。
ちょっと都会の駅周囲なんてこういった業態のお店が密集していてどこも激戦状態です。
最近、理学療法士もコンディショニングセンターと称して開業する人が増えています。
ただ理学療法士というのは基本的に医師の指示があってはじめて動ける職種ですので、そもそも開業権がありません。
したがって日本において基本的に医師の指示がない状況で理学療法士が理学療法といって提供することは法律上禁止されていて(最近は予防分野での活動は認められつつあります。)
そもそも理学療法士協会はこういった理学療法士が治療院を開業することを全く良くは思っていません。
日本理学療法士協会が勝手に開業するなと通達を出しているくらいです。
参照)開業権について
先ほどもお話しした通り理学療法士が開業したとしても理学療法とは基本的に名乗れませんので整体院や治療院、コンディショニングセンターといった形での開業ということになります。この場合も理学療法を行うとは宣伝できません。もしそのようにいうと法に触れることになるからです。
私は今の段階では自分の店舗を構えての開業までは考えていません。
ただ仮に「開業するとすればどのようなことを考えなくてはならないか」と考えるふとしたきっかけがありました。
色々考えてはみたものの全く知識がなかったため下記の本から学びました。
85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル) Kindle版 小谷 満 (著)
本書の著者は柔道整復師で治療院の経営もされている方です。
まだまだ整体院を経営していくということは理学療法士にとってブルーオーシャンの領域です。
整体院を運営していくためには治療技術だけを磨いてもお客さんには来てもらえないというとても重要なことを分かりやすく知ることができます。理学療法士はこの辺りが非常に弱いんです。
なぜなら病院で努めていると営業なんてしなくても患者さんが入院や外来もしくは介護保険サービスを通してきてくれますので、理学療法士に営業の視点などなくてもやってこれたからです。あくまでも「これまでは」ですが…。
本書は理学療法士に限らず治療院を開業したいと考えておられる方は目を通して損はない本ですよ。
参考になったところを引用を通してご紹介し学んだことを私の備忘録としてまとめていきます。
まずは私がハッと気付かされた「100点を取ろうとしない」をご紹介します。
100点を取ろうとしない
あのタレントとしても活躍していた川越シェフが昔、某番組でこういう事を言っていました。僕のお店は80点を目指している、決して100点を取ろうとしないんだ、と。
これは非常に面白い考え方で、実に理に叶っています。
技術系の職人が皆一様に勘違いし、失敗することなのですが、最高の物を提供したら喜ばれると思っています。そう思いますよね?でも、これは大間違いです。最高の物でなくても、期待通りのものが提供されていれば人はそんなにがっかりしません。職人はいつも、期待を超えるものを提供しようと躍起になります。
ですが、当のお客様自身は、そんなものを求めておらず、このお店はこうだ。こんな感じのものを提供してくれるお店だ。と理解している範囲を提供されたくて、あなたの元に来ているのです。むしろ、その思いを無視して、「良いものを提供しないと!」「期待を超える最高の物を提供してこそ職人なんだ!」と作ることに終始してしまうばかりに
- いつもより提供に時間が掛かった。
- 待たされた
- 斬新なものがきた
- 話を聞いてくれなかった
- 思っていたものと違う感じだった
いつもと違うなどお客様はいつもの物を期待していたのに、時間や物、雰囲気などが違うものになったが為に、結果損した気分になるのです。
そうなれば、今までの評価は全て帳消しになります。あれだけ苦労して積み上げた評価がその一瞬で全て無くなるのです。
いつも通っているのに、あんなに待たせて最悪。もう2度と行かない。と損をさせられたお客様は、以前の得など一ミリも覚えていないのです。
だから、川越シェフは、いつもお客様の期待に応えられるように、敢えて、80点取れるものをいつも通り提供できれば100点としていたのだと思います。それなら無理が無く、間違いなく提供できるからです。
100点を取ろうとするから無理をきたして、どこかで60点が出てしまう。それが致命傷だと言っているのです。
引用)小谷 満. 85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル). kotani mitsuru. Kindle 版.
これは開業に限らず非常に重要な考え方でしょう。常に100点を意識すると必ずどこかに無理が生じてしまいます。
どこかで緊張の糸が切れた時にでてしまう60点がお店を運営していく上での命取りになるのですね。
これは治療に限らず家庭や会社などにおいても同様なのではないでしょうか。常に80点をとるぞという姿勢こそが重要であるとを学びました。
次は本書で1番著者が伝えたいという単価に対する考え方をご紹介します。
単価アップの理論と理想
今回の本で実は一番伝えたいのはこの情報なのです。ここを間違えると、本当に苦しくなります。ココだけは!!しっかりと読み込むようにしてください。では、本題 です。単価アップでは、整骨院なのか、整体院なのか、これで大きく戦略に差が出てきます。
整骨院業界は健康保険を使った施術がメインで、基本的には保険診療の患者様が大勢いらっしゃると思います。しかし、あなたもご存知の通り、2、3年単位で、保険の単価はどんどん下り最新の 情報ではマルメで300円 ~600円になると言われています。
一人の患者様を施術してMAX600円。こうなれば5分以上施術をすればもう赤字。 実質3分程度で施術する勢いでおこなわないと間に合いません。これで本当にまともな施術が行えるでしょうか? そして、まともな経営が成り立つでしょうか?
ビジネスでは、常に国や世間の流れの中で時流を読み、対策を取っていくのが常勝手段です。 私が紙の書籍ではなく、電子書籍で出版したのも、時代の流れがもう電子書籍に移行しているからです。それと同じく、国が整骨院に向けて行っている政策に、国からのメッセージ が含まれています。それは、整骨院は予防医療に徹しなさい。そうすれば存在は認めましょう。と言うもの です。国としての本命は病院です。お医者様が取り扱う医療費が莫大に膨れ上がり、現在ではついに40兆円を超えました。本当はココを下げたい!
しかし、 医師会が持つ組織票を失うのが怖くて医療費にメスは入れられない。そこで医師会が、医療費を確保する為に「整骨院が取り扱う療養費を下げろ!」 と政治に圧力を掛けるので、無理やり不正請求を上げてメディアで報じたり理由を付けては下げて来るのです。
柔道整復師が取り扱う療養費など医療費全体の1% 程度であって、こんなところいくら切り込んでも雀の涙ほどにしか削減の役に立ちません。では、何故国がそうした政策を施すのか? 答えは簡単です。
国の戦略とは
- 療養費制度廃止は反発がきつい →
- なら生きるか死ぬか生殺し状態で生かそう→
- ギリギリ六〇〇円程度に抑えて医者のご機嫌を取り→
- 現在病院に通っている患者を整骨 院に通わせる。→
- 病院への通院を控えさせて医療費を抑えよう!
と考えているはずです。
なぜそう考えるのか?ある程度、推察する材料はあります。
本来、接骨院など健康保険を取り扱う業態は原則混合診療を禁止としています。いわゆる、保険診療と自由診療を同時に扱う混合診療は 原則的には認めない(解釈上、問題はないのですが、認定はされていません)となっているにも関わらず、その時項での圧力はまだ掛かっていません。
これだけ、声高に「自由診療を取り入れよう!」とセミナーが開かれ、整骨院なのか整体院なのか区別が付かない状態の院が溢れかえっているのに、全く取り締まらない。「料金を明確に別けるように!」と注意が入る程度で厳罰は免れています。
あれだけ保険診療が溢れれば保険請求を厳しく規制し、交通事故が増えれば事故保険請求規制 を強化している政府が、本来であればほっとくワケはありません。簡単な話、保険診療に付け加え、ココを潰せば整骨院自体のパイはほぼ壊滅的に潰せるのに( 保険請求額 を下げたい・整骨院の数を減らしたい)ここにはメスを入れて来ない。なぜ逃すのか?そこに明確な意図があるからではないでしょうか?
予防医療をさせて医療費を下げよう。保険を使わせてないので、 医師会からの反発も無い。
各界の面子を保ちつつ、医療費削減はこれしかない!とばかりに整骨院の在り方そのものが問われているのではないかと考えられます。
それを感じているのか、いないのか、大手の整骨院グループはこぞって保険診療から脱却をおこなっています。
取り残されているのは、変化を受け入れる体力が無い、小規模整骨院だけです。いずれ療養費報酬が落ちる中で潰れていくでしょう。
それを阻止為るためにも、今の間に対策しておかなければなりません。今ならまだ間に合います。
引用)小谷 満. 85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル). kotani mitsuru. Kindle 版.
療養費って医療費全体のたった1%だけとは驚きました。こんなわずかなパイにメスを入れられている柔道整復師の立場は相当に厳しいものでしょう。
その上、整骨院も治療院同様、町中にあふれかえっています。ということはこのわずかなパイの奪い合いになってしまいますね。
しかし柔道整復師さんほどではないでしょうが、病院で勤務する理学療法士の診療報酬も大きく下げられている現状があります。したがって理学療法士の給与は確実に低下してきています。
そして私たち理学療法士も予防分野での貢献を国から求められています。そんな中、病院によってはまだまだ少数ですが理学療法士に自由診療をさせるところもチラホラ出てきています。
今後、この予防分野のパイは高齢社会がさらに進行する中で確実に広がっていくことは間違いありません。
いつまでも保険に頼っていては理学療法士として保険で請求できる治療費が下がり続ける中で理学療法士の立場は今後ドンドン厳しくなっていくでしょう。
それを防ぐためにも今のように理学療法士も医師に守られた状況で、診療報酬だけを頼りにしていては柔道整復師の先生のように厳しい状況におかれる時代はドンドン近づいているのです。
理学療法士協会の方針には反しますが、理学療法士もどんどん職域を拡大していかなくては柔道整復師さん同様に生き残っていくことはできません。
理学療法士も医師の指示のもとでの保険診療を残しながら自由診療の土台も作っていく必要があると私は考えています。どうしても時代の変化には柔軟に対応しなくては生きていけないからです。
本書では自由診療を行う上でのスタンスが示されていますので次でご紹介します。
自由診療の3パターン
- 完全自費診療:~整体、~トリートメント小顔矯正などそれ一本で十分、収益も施術結果も出せるメニューです。
- セット系自費診療:それ単体では収益化しづらいが、セットにしやすいメニュー骨盤矯正猫背矯正O脚X脚矯正バキバキ系矯正など
- 物販セット系自費診療:ダイエット系:( 耳つぼダイエット、トレーニングダイエットなど) 姿勢 矯正・歩行 矯正などサプリや美容グッズ、 靴やインソールを売るタイプのメニュー。
引用)小谷 満. 85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル). kotani mitsuru. Kindle 版.
この3パターンは開業するにあたって非常に参考になりますね。
理学療法士は痛みが出る原因を体全体を評価した上で治療していく仕事です。私が思うにパターン1と2がとっつきやすいかもしれません。
治療家とは専門家で在りエンターテイナー
丁寧に接したり、喜ばせたり、楽しませたり、時にはバカをしたりおどけたりすることに恥や、やらされている感を感じているでしょうか?
彼らはそれを楽しみ、ゲストに楽しんで貰えたことに誇りを持っていると思います。その気持ちを治療家にも持って欲しいのです。
私は治療家とは、専門家で在り、エンターテイナーだと思っています。
「如何に喜んで貰えるか」「如何に楽しんで頂くか」「如何に価値を提供できるのか?」それを常に考え、患者様と向き合っています。
「私はそこまで頑なではないよ」という先生も、どこかでそう言ったところはないか?を考えてみてください
引用)小谷 満. 85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル). kotani mitsuru. Kindle 版.
この項目はまるでわたしのことを言われているように思ってしまいます。まず私は自分をエンターテイナーまでは考えていませんでした。当たり前ですが、間違っても偉そうにしようなどとは思っていません。
単純に患者さんを治療して喜んでいただくことは当然として、「如何に喜んで貰えるか」「如何に楽しんで頂くか」「如何に価値を提供できるのか?」というように他の面からも喜ばせることができないかと考えることも大切だと学びました。
要らないものを買わされても絶対に使いません。だから、買ってはいけないのです。
「営業は全て断れ!一切話を聞くな!!」です。ポイントは一切話を聞いてはいけません。一切です!相手もプロです、無理やり話を続けます。ですが、なんと言われようが一切聞いてはいけません。即切りましょう。受付がいるお店では、全部断るように指導してください。
・・・・
もしあなたに必要なものなら、もうあなたは買っています。売りに来られる以前に、自ら出向いて買いに行くでしょう。人間は自分に取って必要な物しか見えないように出来ています。
ある車が欲しくなったら、急にその車ばっかり街で見かけるようになるのと同じで本当に必要なものは自然と見えて来るのです。
その売りに来られた商品は、今まで欲しいとも思ってなかった、それが必要だとも気づいてなかった物ですよね?それは本当に買うべきものでしょうか?
引用)小谷 満. 85%が潰れる治療院ビジネスで生き残り続ける14の技術 (DNAレーベル). kotani mitsuru. Kindle 版.
余計なものはいらないということですね。
この考え方を知った上で仮にわたしが開業するとするならば必要と考えるものについて考えてみたいと思います。
必要なもの(物品はできるだけ少なくシンプルさを追求)
-
- 店舗(場所未定)
- ベッド(セザム、ボバースベッド)
- 印刷機
- 時計(卓上時計)
- スピーカー(PC用 Bluetoothも使えるやつ)
- ストレッチポール(ハーフストレッチポール)
- 三角枕
- 電子血圧計
- 枕
- タオル(バスタオル・フェイスタオル)
- ホワイトボード
- クッション(大・中・小)
- パソコン(3台)
- インターネット環境
- Wi-Fi環境(客にくつろいで貰いやすい)
- 体重計
- オーバーテーブル
- 筆記用具
- プロジェクター
- 弾性包帯
- オルトップ
- ケトル(ポット)
- 電子レンジ
- ゴニオメーター
- ルンバ
- 握力計
- バランスボール(ギムニックボール(2つ))
- 杖(Tーcane・Q-cane?)
- セラバンド(黄色・緑)
- タッチアップ(置き型手すり)
- 冷蔵庫
- アイスパック
- マット(簡易型)
- パーテーション
- 金庫
- スリッパ(患者用)
- ゴミ箱
- ウォーターサーバー
- step台(15cm、20cm 、25cm)
- 職員:制服(スクラブ:紺)室内ばき (これらについては自由度を持たせたい)
必要かそうでないのか検討中のもの
考えていかなくてはならないこと
- シフトの組み方
- スケジュール管理:アプリを用いるなどより簡易化する
- 2つのベッドで運用する場合セラピストはフル稼働状態では何人必要か?
- ベッド数
- 定休日:日曜日-月曜日ではなく水曜日
- 客に需要のある曜日や時間帯はいつか?
- カルテは簡易化する
- 研修会費用を交渉
- 研修など長期休みを取る時の休みの取り方
- 価格設定:米国NYではキャッシュオンで200ドル、保険360ドルで設定しているクリニックもある
- お客が来なかった場合の営業は?本当にしなくていいのか?
- 整体院のレイアウトを検討
- トレーナー(健康運動指導士)を雇うなら何をお願いするか→予約管理、自主トレーニング指導、掃除、物品管理
- 時間外での治療を希望する患者の対応
- どうしても予定が合わないときは整体院をcloseか
個人的価値観
- 物品や施設にお金をかけてもらえるように持っていきたい。具体的には、研修会の費用を出してもらったり公休扱いにする
→後輩育成のためにも研修会にお金と時間をかけるような組織となり、有能な人材の育成や確保につながる
- 4週6休制度の改革
- 時間外手当をしっかりとつけれる仕組みづくり。そのためにどうするか。
- 私自身のライフスタイルが朝型である。夜の需要が多い場合は私のライフスタイルを変更する必要がある。
まとめ
まだまだ理学療法士にとって開業するということはブルーオーシャンである治療院業界です。ただ高齢者が増え続ける日本においては需要は尽きないでしょう。
この本はそんな治療院を始めようとしている先生もしくはすでに初めておられる先生にとってもどのように運用すべきかを教えてくれる指南書になります。
また病院などで保険下で働く私のようなセラピストの視点を広げることにも一役買ってくれます。
開業を全く考えていない先生にとってもオススメの本ですよ。
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