はじめに
大腿骨頚部骨折をされる方と同じく大腿骨転子部骨折の患者さんは本当に増えています。
参照)大腿骨頚部骨折の原因や治療をする上での問題点を紹介するよ!
大腿骨の骨折は高齢者だけでなく中年期以降の方でも骨粗鬆症などにより骨がもろくなっていると軽い転倒などでも骨折することがあるため注意が必要です。
これから大腿骨転子部の解剖や骨折する原因そして転子部骨折を治療していく上での問題についてお話していきます。
大腿骨転子部ってどこ?
頚部骨折との転子部骨折の病態を比較するよ
*内側骨折(頚部骨折)⇔外側骨折(転子部骨折)
- 骨折線 関節内 関節外
- 関節液 骨折部に流入 流入しない
- 骨膜性仮骨 形成されない 良好
- 血流 阻血状態 豊富
- 骨折部の接触面積 小さい 大きい
- 海綿骨の量 少ない 多い
- 剪断力 大きい 小さい
したがって頚部骨折では骨癒合(骨折部の骨どうしがくっつく)の強度が弱かったり癒合に時間がかかる傾向があるのに比べ転子部骨折では骨癒合が良好であるといえます。
予後は適切に手術し後療法を行ってもすべてが受傷前レベルには回復しません。
歩行再獲得率は55~90%であるといわれています。
また、誤嚥性肺炎や肺塞栓症による死亡など生命予後に影響を及ぼす骨折であるのも特徴です。
大腿骨転子部骨折の分類を紹介するよ
大腿骨転子部骨折の分類はいくつかあり有名なものでいうと、
- Evans分類
- Jensen分類
が用いられてきましたが近年はこれらに加えて、
- AO分類
- 3D-CT分類
も用いられるようになってきています。
ここでは私が普段用いているEvans分類(エバンス)とJensen分類についてご紹介します。
Evans分類
Evans分類は安定型と不安定型に分けられます。
安定型
- Type1:group1・2
不安定型
- Type1:group3・4
- Type2
に分けられます。
Jensen分類
Jensen分類は複雑な骨折の形態を分類することができます。
Ⅰ型〜Ⅴ型、Reserved typeの6つの型に分類されます。
Ⅰ型(転移のない完全骨折)
Ⅱ型(転移のある完全骨折)
Ⅲ型(転子部の完全骨折に加えて大転子部に骨折がある)
Ⅳ型(転子部の完全骨折に加えて小転子部に骨折がある)
Ⅴ型(転子部の完全骨折に加えて大転子部と小転子部に骨折がある)
Reversed type(骨折線の内側が近位で外側が遠位)
骨接合術の方法を紹介するよ
大腿骨転子部骨折の観血的固定術の方法は色々あり、どの方法を選択するかはDr.の考え方によって変わってきます。
これから比較的良く行われる固定術であるCHSとγ-nailについてお話します。
CHS:Compression Hip Screw(コンプレッションヒップスクリュー)
遠位骨片をプレートで固定して大腿骨頭はラグスクリューを用いて固定する方法です。
そのため骨折部を圧迫により癒合が期待できます。
また手術による侵襲が少ないことが大きなメリットとしてあげられます。
ただEvans分類でいう不安定型には不適応であることやプレートで固定したところの骨がもろいと骨折してしまうなどのリスクがありあす。
γ-nail:Gamma nail(ガンマネイル)
この手術は遠位骨片を髄内釘で固定して大腿骨頭はラグスクリューを用いて固定する方法のことです。
こちらは骨の中に突き刺して固定する髄内釘という固定法でCHSに比べると強固に固定が可能です。
そのためEvans分類でいう安定型だけでなく不安定型も適応となります。
ただγ-nailでも骨頭が内反に変形するなどのリスクがあることは留意しておく必要があります。
参照)γ-nail
まとめ
股関節の外側骨折である大腿骨転子部骨折とその分類や治療方法についてご紹介しました。
頚部・転子部骨折に関わらず股関節の骨折では臥床期間による筋力の低下などの廃用症候群を防ぐために手術を選択される場合が多いです。
このようなことにならないように普段から転倒などの外傷に注意することが最大の予防・治療となることはいうまでもありません。
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