はじめに
リハビリっていつまでしたらいいの?
これはリハビリ(以下、理学療法)をやっていく中で患者さんから良く聞かれる質問です。
この疑問の答えを導き出すためには患者さんが理学療法を受ける目的がいち番大切になってきます。
ほかにも
- 使っている保険の種類(健康保険もしくは介護保険など)
- また病院でリハビリを受けるのか施設でリハビリを受けるのか・・・
- それとも訪問リハビリなのか・・・
などによっても変わってきます。
このようになかなか多角的に考えて行く必要のある難しい問題です。
この記事を読んでくださっている方がある程度筋道を立てて考えられるように整理して行きたいと思います。
理学療法士から治療を受けるには医師の指示が必要です
理学療法は医療行為であるため医師の指示のもとで行われます。
いくら患者さんご本人やご家族さん、看護師さんケアマネージャーや理学療法士がリハビリを必要だと思ってもお医者さんが理学療法の必要性を感じていなかったとします。
このように理学療法の指示(薬局で薬もらうときの処方箋というとわかりやすいでしょうか)を医師が出してくれないとなるとリハビリは実施できないのが現在の医療制度の実際です。
理学療法士の役割やリハビリを受けられる施設って?
まず理学療法士の役割についていち度確認したいと思います。
理学療法士の役割って?
理学療法士及び作業療法士法第2条より
「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」
とありますがこの定義は昭和40年に施行されたものでどうみても今の時代には合いませんね。特に・・・
- 身体に障害のあるもの
- 動作能力の回復
だけで理学療法を行うのではなく改善はなくてもADL維持させるだけでなく介護予防にも着目する必要がある時代です。
現在は高齢者が増えていますので例えば脳卒中により運動麻痺を患ってしまっても再び元気に生活している高齢者は多くおられます。
このような方は麻痺があっても元気に生活しておられますのでこれを障害と言って良いのか・・・?もちろん厳密には障害なんですけどね。
ここで出てくる基本的動作能力というのは
- 寝返り
- 起き上がり
- 立ち上がり
- 移乗
- 移動(歩行)
上記5つを言います。
痛みが歩きにくくさせている要因だとするならばこの痛みを取ってあげることによって歩きやすくししようと治療するのです。
理学療法士の存在意義は痛みをとるだけではなくこれらの動作能力を改善させることが目的になるのです。
あくまで動作能力を向上・維持させる目的で理学療法は行われるのです。
したがってこの定義の通りに考えるのであればただ単にマッサージしてもらいたいなどという理由だけでは理学療法は受けられないことになります。
理学療法を受けれるところってどこ?
病院・クリニックといった医療機関に加え老人保健施設、老人ホームなどの介護保険施設で行われています。
入院・通院中の方への理学療法
病院やクリニックに入院・通院中の場合、まずは理学療法を受けたいむねを主治医に相談してください。
その相談を受けて医師が理学療法の必要があると判断すれば理学療法を受けることができます。
自宅で生活している方への理学療法
運動機能の維持・向上、人との交流、日中余暇活動、住宅改修を希望される場合、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションを希望される場合は、かかりつけ医やケアマネージャーあるいは市町村介護保険課に聞いてみるとよいでしょう。
身体機能の低下を未然に防ぐことを目的になりそうな場合は介護予防事業をご希望の場合は市町村老人保健担当課、または地域包括支援センターへ問い合わせてみてください。
結局、いつまで理学療法を続けたらいいの?
患者さんの理学療法を受ける目的がどこにあるのか?
これが非常に重要になります。
- 動作能力を向上させたい(向上させるのであればどの程度まで向上させることを目標にするのか?)
- 現在の動作能力を維持させたいのか・・・
ここをまず明確にする必要があります。
これはその人が置かれている社会的役割や仕事の内容、そして本人の考え方によって変わってきます。
こんなことはありえないのですが(例えば例えばですよ・・・)
Aさん、Bさん、Cさんという年齢も性別も同じくらいの人がいたとします。
そしてありえないことですが同じ場所を同じ時期に骨折して動けなくなったとします。
この3人が同期間・同程度のリハビリが実施されて3人とも同じ程度の動作能力まで回復したとします。
確かに動作能力は同じかもしれませんが、この3人の考え方は別人格です。
したがって・・・
- Aさん:現在の動作能力を維持できればよいと考えている。
- Bさん:もう少しだけADLをあげてよくなりたいと考えている。
- Cさん:前とほぼ同じ状態まで回復したいと考えている。
上記のような感じで動作能力は同じくらいでもリハビリの目標はそれぞれの考え方によって違ってきてしまうのです。
また暮らしている環境によっても目標設定は大きく変わってきます。
リハビリを行う主人公は医師でも理学療法士でもなくあくまでも患者さんご本人ですので、リハビリを継続するかどうかについては患者さんの考え方によって大きく変わってきます。
ただ難しいのは本人の考えだけでなく、特に高齢者の場合はその方をサポートする家族などの意見も取り入れる必要があるところです。
例えば先ほどのAさんはこれ以上動作能力を上げなくてもいいと考えていても、普段の生活を介助して支える家族が
「今のままでは介助を手伝いきれないのでもう少しリハビリを受けて動作能力を上げて欲しい」
と考えていたとします。
この場合は本人の意思には反するかもしれませんが動作能力の伸びしろを予測しながら医師や理学療法士などが理学療法の必要性があると判断した場合、
- リハビリはもう少しやったほうがいいですよ・・・。
と促すことになります。
したがって特に介助が必要なレベルの人では本人だけでなく家族など本人をサポートする方々の意見も非常に大切になってくるというところには注意が必要です。
この辺も踏まえて受診するときはある程度リハビリの目的を定めた上でにはなりますが、今後もリハビリの必要性を感じるのであれば普段から
「もう少しリハビリを続けたい」
などといったリハビリに対する意向をお医者さんにお話ししておく必要があります。
やはり先ほども申し上げたように最終的に理学療法士にリハビリの指示を出すのは医師ですから・・・。
まとめ
「リハビリをいつまで続けたらいいのか」これについては普段、私が理学療法士として関わっている中で患者さんやセラピストが悩むポイントです。
そこで少しでも考えを整理していただけたらと思いこの記事を書いてみました。
理学療法を上手に利用され健康な生活を少しでも長く続けていただけたらこれほど嬉しいことはありません。
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