はじめに
ケガや病気でリハビリにこられる患者さんと日々接していると、もちろんケガや病気の程度にもよりますが特に現役世代の働き盛りの方の落ち込み方が激しいように思います。
現役世代は社会的役割が多いこともあってケガや病気になったからといって、これまで行ってきた社会的役割を全うできなくても仕方がないと簡単には開き直れないのも事実でしょう。
私は理学療法士ですので患者さんがうつ病などと診断はできませんが、精神科を受診されたほうがよいのではないかと感じさせる患者さんにも日々臨床をしていると出会います。
「うつ」について説明するよ
うつ病はその名の通りうつ状態を中心とする症状であることは皆さんご存知でしょう。
うつ病とうつ状態の違い
誰でもストレスが重なったり悲しいこと、辛いことが続くと憂うつになったり気持ちが沈んだりすると思います。
そのうつ状態とうつ病の状態の症状はかなり似ていることもあって、はっきりと区別がつかないことが少なくありません。
したがってうつ状態とうつ病の違いは症状が病的であるかないかの違いなのです。
病的でないうつ状態は一時的なもので時間の経過とともに自然に回復していきます。
しかしうつ病は自然に回復することはなかなか難しく長期間にわたって持続します。
また、うつ病にはさまざまな身体症状が現れます。
たとえば・・・
- 落ち込む
- 眠れない
- 食欲がない
といった身体症状が認められます。
このように身体の病気という仮面を被っているようにみえることから仮面うつ病と呼ばれます。
うつ病にかかる人の割合
うつ病は子どもから高齢者まで世代を問わずに発症する病気です。
うつ病の有病率
うつ病は生涯のうちにうつ病を経験するのは、10~15人に1人と考えられており、きわめて発病する可能性が高い病気といえます。
男女比率
男女比でみると女性の方がうつ病になりやすく男性の約2倍近く発症すると考えられています。
人的資本、金融資本、社会資本から精神的に落ち込む理由を考える
『幸福の資本論』という本の中で作家の橘玲さんが人的資本、金融資本、社会資本という3つの資本を提唱されています。
幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
それぞれの資本の内容は・・・
- 人的資本:自らの労働力を労働市場に「投資」して給与や報酬という「富」を得ること
- 金融資本:もっている金融資産という「富」やその金融資産から得る「富」を得ること
- 社会資本:まわりのひとたちとの関係性から「富」を得ること
病気やケガをすることによって、これら3つの資産が失われるために不安が積もり落ち込むのだと思います。
この分類をもとに怪我や病気をした患者さんが喪失する具体例について考えていきたいと思います。
人的資本
- 仕事ができないので労働収入がなくなる。
- 病気が治っても復職できない。
- 復職したときには希望する部署では働けず違う部署で働くことになった。
金融資本
- 労働収入がなくなる。
- 人的資本が乏しくなるため金融資本を切り崩す必要がある。
社会資本
- 入院したことにより奥さんや子供といった家族に会えない。
- 会社での社会的地位が危なくなる。
- 会社の他の職員になんと思われるか気になる。
落ち込んだときの対処の仕方について
けがや病気をしてしまったら、
なってしまったものは仕方がない・・・
とある程度は現状を受け入れることが大切だと思います。
しかし、そんなに潔く諦めたり受け入れることが簡単に出来たら誰も苦労しないでしょう。
少し落ち着いたら3つの資本を整理しよう
わたしがお勧めする方法は、
- 落ち込むときは大いに落ち込んでみること
- そして少し落ち着いたら自分がもっている資本を先ほどご紹介した3つの資本そって整理すること。
たとえば…
- 奥さんがいてくれる。
- 家族がいてくれる。
- 多くはなくても貯金がある。
- 勤めている会社が復職を待ってくれている。
- 配置転換になる可能性があっても働く場所がある。
その他にも病気をしたことで・・・
- 会社の同僚の優しさに気付いた。
- 家族の絆が深まった。など新たな資本の発見があったかも知れません。
失ったものばかりでなく、もっている資本から目を逸らさないでください。
またケガや病気をする前からこれら3つの資本を高めておくことも大切ですね。
まとめ
今回は病気になったときに陥りやすいうつ状態や落ち込んだときの対処法についてお伝えしました。
少し視点を変えて考えることができると普段は見えない世界を知ることができるでしょう。
私も普段から実践している考え方ですので効果は実証済みです。
皆さんもいち度お試しくださいね。
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