はじめに
腎臓疾患の患者さんにもリハビリテーションは大切です。
しかしあまり患者さんにはリハビリの必要性は理解されていません。
腎臓疾患に限りませんが内部障害の患者さんは「安静にするしかない」と考えておられる方も多いように思います。
骨折や脳卒中など明らかに歩きにくくなるなど障害がわかりにくいので必要性を感じないのも無理はないかもしれません。
これから腎臓疾患の働きや慢性腎不全の特徴、腎臓リハビリテーションのエビデンスについてお話していきます。
そもそも腎臓ってどんな働きをしてるの?
- 血液を濾過し身体に必要な水分・ミネラルや栄養分のバランスを調整する。
- BUNやクレアチニンや過剰な水分、電解質を排出
- レニンという酵素を分泌し血圧を調節する。
- ホルモンを分泌し骨髄での赤血球産生や骨の発育・維持をはかってくれる。
上記のような働きをしてくれています。
腎臓に関する血液検査データ
腎臓に関係する血液データの正常値をご紹介します。
Cre(クレアチニン)
creは筋肉量に関係します。
したがって筋肉量が少ないと過小評価されやすい。
- 基準値
- 男性:0.6〜1.0mg/dl
- 女性:0.5〜0.8mg/dl
BUN(尿素窒素)
- 基準値
- BUN:8〜20mg/dl
eGFR(糸球体濾過量)
計算方法は先ほどのクレアチニン値と年齢と性別から計算します。
参照)eGFR計算
一律に体表面積1.73で割っているため体格差の影響を受けます。
*18歳未満には使えないので注意が必要です。
慢性腎不全(CKD)とは?
CKD(chronic kidney disease)は糸球体濾過量(GFR;glomerular filtration rate)で表される腎機能低下があるか、もしくは腎臓の障害を示唆する所見が慢性的に持続する全てを包括した場合を言います。
①GFRの値に関わらず腎障害を示唆する所見(検尿異常、画像異常、血液異常、病理所見など)が3ヶ月以上存在すること。
②GFR60ml/min/1.73㎡未満が3ヶ月異常持続すること。
腎臓リハビリテーションのエビデンス
腎臓は安静時には心拍出量の20%の血液供給を受け組織単位重量あたりの血液潅流量は他のどの臓器よりも多いのが特徴です。
しかし運動時は筋・肺・心への血流分配が高まるため腎血流量は低下します。
そのため慢性腎不全の患者さんが運動することは腎血流量低下から腎細胞障害を誘発し腎機能障害、腎臓病変憎悪のリスクがあると考えられてきたこともあり腎臓病の患者さんへのリハビリが積極的に行われてこなかった背景があリます。
しかし最近では腎不全に対する適切な運動は腎機能に悪影響を及ぼさずに
- 運動耐容能
- QOL(生活の質)の向上
- 糖・脂質代謝の改善
といった効果をもたらすとされています。
- 腎血流量は運動による影響が大きい。
- 高強度の運動で尿タンパク排泄量の増加、糸球体濾過量が減少する。
- 運動時の腎血流量の現象は健常者より腎炎症患者の方で大きい。
腎不全(非透析患者)に対するエビデンスもあります!
- CKDに対する適切な運動は腎機能に悪影響を及ぼさず運動耐容能やQOLの向上、糖や脂質代謝の改善をもたらす。
- 低タンパク食摂取においてもタンパク異化を防止する。
- CKD Stage3あるいは4の患者が1回40min、3回/W、12ヶ月の有酸素運動でeGFR低下のスロープが改善した。
- CKD Stage3-5を対象に運動頻度が高かった群は透析導入に至るまでの期間が長い傾向にあった。
- 肥満を伴う保存期CKD患者に対し1回30min、3回/W、12週間のトレッドミル運動(ATレベル)でeGFRが改善した。
まとめ
腎臓疾患にも安静だけでなくリハビリテーションは重要であることをご理解いただけましたでしょうか。
しかしあまり患者さんにはリハビリの必要性は理解されていません。
ただ腎臓疾患に対するリハビリテーションはとてもデリケートであることも事実です。
1人で行おうとせず医師や理学療法士に相談しながら
行うようにしてくださいね。
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