リハビリ・健康

突進歩行の対策を。パーキンソン病は転倒に絶対に注意すべき

はじめに

健常者に比べパーキンソン病の症状の特性から患者さんは歩行中に転倒を経験される方が多く転倒することで骨折など大きなケガをされる方も少なくありません。

またパーキンソン病の原因は脳幹にある中脳の黒質の変性が原因ではないかといった仮説が有力ですがはっきりした原因は今だに不明です。

*中脳の黒質ドーパミン性神経細胞が減少しドーパミンが正常の20%以下になると大脳基底核の機能障害により運動症状が出ると言われています。

パーキンソン病の有病率は150人/10万人と言われており好発年齢は50-70歳です。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の症状は運動症状と非運動症状に分けられます。

運動症状としては安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害

非運動症状としては精神症状、起立性低血圧、認知機能障害、リズム形成障害

が認められます。

運動症状

パーキンソン病の患者さんは運動に関する脳から体への命令がうまく行えなくなる病気です。

これらの症状が歩行などの動作に影響を及ぼします。

詳細を見て生きたいと思います。

安静時振戦

手足の震えがどちらか片側に起こる方が多いです。

眠っているときは起こらないのですが覚醒時で安静にしているときに振戦がみられます。

また精神的に興奮したときに震えが大きくなります。

パーキンソン病の初期症状によくみられます。

固縮

筋肉のこわばりのことです。

無動

パーキンソン病が徐々に進行すると脳からの命令が体に届かず体を動かしにくくなり動きも遅くなります。

また仮面様顔貌といってお面をかぶったように表情も乏しくなります。

姿勢調節障害

立った姿勢では股関節や膝関節そして肘などの大きな関節が曲がった状態になります。

この姿勢から体のバランスが崩れても立ち直ることができず転倒しやすくなります。

非運動症状

精神症状

パーキンソン病患者の約半数にうつ傾向があるといわれています。

ただ本人も家族もうつ傾向に気づかないケースも多く注意が必要です。

起立性低血圧

寝た状態から起き上がったり立ったりするような姿勢を変えたときに血圧が低下する症状です。

他の自律神経症状としては便秘や排尿障害がみとめられることもあります。

認知機能障害

パーキンソン病患者さんの非運動症状の中でももっとも認知機能障害が起こりやすいです。

全パーキンソン病患者さんの30%程度に認知機能の低下があるといわれています。

リズム形成障害

 

重症度の分類(ホーン・ヤール、生活機能障害度)

基本的にはパーキンソン病の重症度はホーンヤールの分類・生活機能障害度を用います。

・ホーンヤール:stageⅠ.Ⅱ=生活機能障害度:1度

・ホーンヤール:stageⅢ.Ⅳ=生活機能障害度:2度

・ホーンヤール:stageⅤ =生活機能障害度:3度

ホーンヤールの分類でⅢ度以上かつ生活機能障害度が2度以上で、特定疾患医療補助制度を受けることができます。

ホーンヤールの分類

Ⅰ度

症状は片方の手足のみ

Ⅱ度

症状が両方の手足にみられる

Ⅲ度

姿勢反射障害がみられバランスを崩しても立ち直れなくなる

Ⅳ度

日常生活に部分的に介助が必要

Ⅴ度

車椅子での生活あるいは寝たきりとなる。

生活機能障害度

1度

日常生活、通院にほとんど介助を要さない。

2度

日常生活、通院に介助を要する。

3度

日常生活に全面的な介助を要し歩行・起立が不能。

 

パーキンソン病患者さんの歩行の特徴

パーキンソン病の患者さんの歩行の大きな特徴として小刻み歩行、すり足、突進歩行という3つの特徴があります。

これからこの3つの特徴をそれぞれみていきたいと思います。

小刻み歩行

小刻み歩行では歩幅が狭く左右の足の間隔が小さいのが特徴です。

無動によって運動が小さくなり姿勢反射障害によって体重移動が大きくできないためこのような歩行になってしまうと考えられます。

すり足歩行

本来歩いているときは足の裏が床に接地したり離れたりします。

この離れる期間がほとんどない状態で歩くことをすり足歩行と言います。

これは小刻み歩行同様に姿勢反射障害、筋の固縮から生じると考えられます。

突進歩行

健康な方が歩くときは意識していないときは歩行のスピードは常に一定であり、急に歩くスピードが早くなったりはしないと思います。

しかしこの突進歩行は歩く距離が伸びるにつれて意識していないのに、あるいは一定のスピードで歩こうと思っても歩行スピードがだんだん速くなってしまうという歩行の特徴をいいます。

転倒を防ぐために

パーキンソン病の患者さんが転倒というと医療者も歩いている最中の転倒を思い浮かべてしまいまあと思います。

しかし、よくよく聞いてみると非運動症状の起立性低血圧が原因で立ち上がった瞬間にふらついて転倒される方もおられます。

そのためまずはいつ・どのような環境下で自分が転倒する傾向にあるのかを整理して再確認する必要があります。

・少しでも段差があるとつま先が引っかかって転倒するな。

・手すりを持ちながら歩くときは転倒したことはないな・・・。

・狭いところを歩こうとすると足が出なくなって転倒するな・・・。

といったような転倒しにくい状況を把握することでその環境をできるだけ普段の生活の中に取り入れたりてみてください。

どうしても狭いところを歩く必要があるときは手すりをつけてみるなどの対策を検討してみてください。

またこの時に一人で悩まずに理学療法士などの専門家の意見を聞いて取り入れてみても良いかもしれません。

 

まとめ

パーキンソン病の患者さんは「転倒するのが怖い」という理由から歩くことそのものを避けてしまいがちです。

そうすると次第に筋力の低下などといった廃用につながってしまいどんどん動けなくなるという悪循環に陥りがちです。

普段の生活をより充実させるために転倒しない方法だけを考えるのではなく、どうすれば余裕を持って歩けるのかと考えることも大切になってきます。

 

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