はじめに
PNFはアメリカで始まった理学療法士の治療技術になります。
PNFの歴史やコンセプトそしてコンセプトの中でもテクニックに着目して書いて行きたいと思います。
この記事は私が講習会や本から学んだことを忘れないための備忘録にもなっており現段階ではかなり読みにくいものです。
少しずつ読みやすくしていきますので今はお許しください。
さらにこの記事を通して興味をもたれた方は「まとめ」にある参考文献をご一読ください。
PNFの歴史やコンセプトについて
PNFの歴史
PNFとはproprioceptive neuromuscular facilitation(固有受容性神経筋促通法) をいいます。
1940年代にアメリカ人で医師のHerman Kabat(ハーマン・カバット)と理学療法士のMargaret Knott(マギー・ノット)がKFRC(Kaiser Foundation Rehabilitation Center)にて研究開発された治療技術です。
Margaret knottさんが亡くなった後も1952年よりMargaret Knottの助手となり活動されたDorothy E,Vosss(ドロシー・ボス)がPNFの体系化に貢献されています。
Herman Kabat医師がMargaret Knoettさんに依頼する前にも元々オーストラリア人でオーストラリアで看護師をしていてアメリカで理学療法士になったElizabeth Kenny(エリザベス・ケニー)に依頼したが断られたという逸話もあるようです。
それにしてもこれだけHerman Kabat医師が治療の体系化に必死になったのはHerman Kabatの息子さんが17世紀〜19世紀にイギリスや欧州で大流行したポリオという病気にかかったのを何とかして良くしてあげたいという思いからだったそうです。
1990年代には日本でもPNFコースが開催されるようになっており、このコースには医師・理学療法士・作業療法士なら誰でもコースに参加できます。
PNFのコンセプトについて
3つのFoundation(基盤)から成り立っています。
- 哲学
- 基本原理・原則
- テクニック(Techniques)
次ではこの中のテクニックについて書いて行きます。
PNFのテクニックってどんなものがあるのか?
PNFのテクニックとは問題解決のための考え方と手段を用います。
- 運動の教示・学習:Rhythmic Initiation
- 遠心性の筋収縮のコンビネーション(求心性収縮・遠心性収縮・静止性収縮)で筋のコントロールを高める:Combination of Isotonics
- すばやい筋伸張の反復:Repeated stretch from begining of range
- すばやい筋伸張の反復:Repeated stretch through range
- 位置覚・運動覚を刺激し、目的の位置を教える(コピーする):Replication
- 動的な交互運動によっ関節の動きを高める:Dynamic Reversals
- 静的な交互運動によって安定性を高める:Sabilizing Reversals
- 等尺性交互収縮によって繊細な安定性を高める:Rhythmic Stabilization
- 等張性収縮後のリラクゼーション:Contract Relax
- 等尺性筋収縮後のリラクゼーション(痛みの場合もある):Hold Relax
上記10コの項目からなります。
10コあるテクニックの定義・手順・目的を簡単に紹介するよ!
Rhythmic Initiation(リズミック・イニシエーション )
運動の教示・学習
定義
- 動筋パターンの運動能力を改善
手順
- 他動運動→自動介助的運動→抵抗運動→自律運動
目的
- 運動の学習・正常化
- 運動開始能力の改善
- 協調性と運動感覚の改善
- 運動速度の正常化
- 筋緊張の正常化
Combination of Isotonics(コンビネーション・オブ・アイソトニックス )
等張性筋収縮のコンビネーションで筋緊張を高める
定義
- 動筋パターンの中でリラクゼーションさせることなく求心性、遠心性、静止性の持続性筋収縮を行わせる。
手順
- 求心性か静止性から開始し、どの運動域でも可能。
- 目的に応じて3つの収縮タイプを組み合わせ繰り返し行いどの収縮タイプで終了しても良い。
目的
- 筋力・筋持久力の向上
- 協調性と運動の制御を改善
- 機能的トレーニングの獲得(遠心性の制御)
- 拮抗筋の抑制
- 運動パターンを教える(対角線をみつける)
Repeated stretch from begining of range(リピーテッド・ストレッチ・フロム・ビギニング・オブ・レンジ)
定義
- quick stretch(患者の随意努力と組み合わされた伸張刺激)を用いてエロンゲーションされた緊張下での筋に対する反復的繰り返し
手順
- 目的とする筋群を十分にelongation(エロンゲーション)し伸張反応を誘発するためにquick stretchを全要素筋群に与える。
- それと同時に患者の動的な反応を得るきっかけとなるタイミングで口頭指示を与える。
- 動的な運動中、抵抗を与え患者の筋収縮を得る。
目的
- 筋収縮・運動開始能力の促通
- 運動単位のさらなる動員
- 筋力の増大
- 自動運動の拡大
- 筋疲労の減少
- 望ましい運動方向の再教育
- 異常な筋緊張の正常化
*禁忌:関節の不安定性、骨・筋・腱・神経の障害、痛み
Repeated stretch through range(リピーティッド・ストレッチ・スルーレンジ)
素早い筋伸張の反復(運動域中にて)
定義
- 筋収縮を起こしている動筋パターンに対し繰り返しストレッチを加えることで、より収縮反応を増大する。
手順
- 動筋パターンの中、筋活動が低下し始めたと感じられたところで全ての要素に対しQuick stretch(Re-stretch)を与える。
- 適切なタイミングで口頭指示を与える。
- 患者さんには運動を行い続けてもらうこと。
目的
- 運動単位の動員
- 自動運動域の拡大
- 筋力の増大
- 疲労の軽減(持久力の増加)
- 機能的に必要な可動域での強化
- 目的とする運動方向への再教育
- 異常筋緊張の正常化
Replication(リプリケーション)
定義
求める最終域(目的位置)にて保持することを特徴とする一方向へのテクニックです。
逆方向へ戻る部分的な運動を他動的に行い目的位置に自律的または抵抗に抗して戻る。
部分的な運動を他動的に行い目的位置へ自律的または抵抗に抗して戻る。
その目的位置まで戻る距離は全運動域に到達するよう自律的または抵抗に抗して徐々に増加する。
手順
- 目的の位置または最終位置にて抵抗を与える。
- 患者さんにリラクセーションを促し目的位置から離れる方向に他動的に動かす。
- 最初に学習してもらった位置まで自分で戻してもらうか抵抗を与えて戻る。
- この作業を繰り返すたびに最終位置よりだんだん離れた位置から開始する。
目的
- 運動の最終位置、その道程を教える。
- 目的位置での筋収縮維持能力の評価
- 目的位置から離れた様々な位置から戻る能力の評価
- 身体感覚の改善
- 機能的動作(ADL)の改善
- 協調性の改善
Dynamic Reversals(ダイナミック・リバーサルズ)
定義
- 止まったりリラックスすることなく一方から逆方向へと切り替わる抵抗された求心性運動
手順
- 一方向の患者の運動に抵抗をかける(通常は強い運動方向)
- 求める最終運動域に到達すると準備のための口頭指示の間に徒手接触を切り替える
- 求める最終運動域で口頭指示によってリラックスすることなく運動方向を変える
- この逆方向へ運動に対し抵抗が与えられる
- 治療目標に応じて運動方向の切り替えを繰り返す
目的
- 自動ROMの改善
- 筋力・持久力の増大
- 協調性(運動変換能力)の改善
- 疲労の軽減
- 筋緊張の正常化
*運動方向の切り替えは特定の運動域で強調するために用いることができる
*一方向か両方向でのスピードは変化を持たせることができる
*四肢のパターンとともに使われるときは遠位の要素から逆方向へ誘導する。
Stabilizing Reversals(スタビライジング・リバーサルズ)
定義
特定の姿位にて徒手接触を変えることによって安定性を促通するために十分な抵抗に対して交互に切り替わる静止性の収縮
手順
- 求める姿位にて患者の強い方向から開始しほんの少しの運動かまたは動くことなく抵抗を与える。
- その位置で止まってなどの静的な口頭指示が使われる
- 徐々に動員がなされたならセラピストは一方の手を他の方向に変えて抵抗を与え始める。
- 患者が新たな抵抗に適切に反応するとセラピストはもう一方の手を変えて新たな方向に抵抗を与える。
- 治療目標に応じて抵抗の方向の切り替えを続ける
- セラピストが方向を変えると患者はリラックスすることなく活動を続ける
*圧縮と牽引は抵抗の方向が切り替わる間、円滑な引き継ぎを促通するために用いてよい。
目的
- 安定性の向上
- 姿勢制御の改善
- 協調性の改善
- 肢位の維持
- 新たな肢位や可動域を教える(再教育する)
- 筋力と筋持久力の向上
Rhythmic Stabilization(リズミック・スタビライゼーション)
定義
- リラックスすることなく徒手接触が変わらない抵抗に対して交互に切り替わる等尺性収縮
手順
- 徒手接触を変えることなく主動作筋群と拮抗筋群に抵抗を与えることができるところに手を置く
- 強い方から開始し、すべての要素に徐々に抵抗を増加させる(等尺性筋活動)
- 適宜、圧縮か牽引を加える
- 緊張を失わずに抵抗の方向を徐々に変える
- 情的な口頭支持を使う:ここで止まって 動かさせないで
- 抵抗の方向の切り替えを続ける
- この手順をリズミカルに繰り返す
- 抵抗は目標や患者の等尺性収縮能力によって変えられるかもしれない
*患者とセラピストは動こうとしない
*患者はセラピストの抵抗に合わせなければならない
*切り替えの速度が上がると筋肉の同時収縮が起こる
目的
- 安定性(同時収縮)の促通
- 姿勢制御とバランスの改善
- 協調性の改善
- 肢位の保持
- 新たな位置や可動域を教える(再教育)
- 静的な筋力と持久力の向上
- リラクゼーションの促進
*禁忌:心臓・血管系・呼吸器系の合併症
*留意:小脳障害、高齢・指示理解困難の場合
Contract Relax(コントラクトリラックス)
定義
- 動きを止めるのに十分な抵抗に抗される等張性収縮の後に弛緩し新しい可動域を得る。
手順
- 運動の最終可動域まで体節を持っていく。他動的にまたは自動的に
- この位置を失うことなく患者に制限のある筋群のまたはパターン内での筋群の円滑で協調的な等張性収縮をさせる。抵抗により運動を止める。特に回旋の要素に対し注意を払う。少しの運動は起こるかもしれない。
- 患者がこの収縮を数秒維持したらリラックスするよう指示する。
- 新しい可動域の終わりまで体節を動かす。これは他動的または自動的にされる。これ以上可動域が得られないところまでこの手順を繰り返し新しく得た可動域を他のテクニックとともに再強化する。
目的
- リラクゼーションかつ筋群のストレッチ
- 可動域の改善
*痛みがある場合は使わない。
Hold Relax(ホールドリラックス)
定義
- 力を合わせて行われるとう尺性収縮によりリラックス後に新しい可動域を得る。
- 直接的ホールドリラックス:制限のある筋群の収縮(等尺性収縮後の弛緩)
- 間接的ホールドリラックス:制限のある筋群の拮抗筋群の収縮(相反抑制)
手順
- 直接的ホールドリラックス:制限のある筋群を利用
- 最終の可動域まで体節を持っていく。これは他動的または自動的になされる。
目的
- リラクゼーションかつ筋群のストレッチ
- 可動域の改善
- 痛みの軽減
まとめ
PNFのテクニックを中心にまとめてみました。
この備忘録(記事)を読んでPNFに興味を持たれた方は日本語訳された本もありますのでぜひとも目を通してみてください。
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