はじめに
ご高齢の方が過去に例をみないほど増え続けておられるなかで日常生活の場である自宅内で転倒して骨折などケガを負って入院される方が増えています。
同時に自転車に乗っているときに転倒などにより受傷され病院の外来を受診されたりケガがひどい場合は入院される方も増えています。
またこれまで移動手段は車ばかりだったが病気をしたことがきっかけで移動手段を自転車に変更したいと考える高齢者も多くおられます。
入院している患者さんが自宅に帰る前に理学療法士は必要性に応じて家屋調査を行うのですがその時にどのような自転車に乗るのか(乗っていたのか)を確認すると錆びた空気も入っていないようなボロボロの自転車を持ってこられることもしばしばです。
健康な若者でもこのようなボロボロの状態にある自転車に乗りたいと言われたら「もう処分しましょうよ。」と提案したくなるような状態の自転車に身体能力の低下した高齢者が乗るとどのようになるか・・・。想像しただけでも恐ろしいものです。
ある程度ご高齢者になると正直、自転車もやめた方が本人だけでなく周囲の方々の安全のためにも非常に良いと思います。
それでも「杖を使うほどではないが歩くと膝が痛いし歩くスピードも遅いのでどうしても自転車に乗りたい」という方々のために電動カートや電動アシスト自転車といった車輪付きであるがスピードが出にくい比較的安全なモビリティーに焦点を当ててお話を進めたいと思います。
高齢者が運転する車や自転車での死亡事故が増えている・・・!
「自転車の安全利用促進委員会」が提供している下のグラフ「年齢別自転車乗車中負傷者及び死傷者数(2011)」を見ていただきたいと思います。
このグラフから16〜19歳そして70歳以上の高齢者の死者数が際立って多く、また高齢者の自転車事故による負傷者数がずば抜けて多いことがわかります。
自転車に乗っていて走行中に転倒されリハビリに来られた患者さんの自転車で転倒してしまった理由を思い返してみると、その理由は患者さんご本人でもはっきりしないものも多いのですが
・高齢により判断能力が低下し自転車事故を起こしてしまうということ。
・身体の持久力が低下しわずかな距離でも疲労してしまい自転車を操縦する余裕がなくなり他の歩行者と接触したり単独で転倒してしまった。
・走り初めにバランスを崩し転倒してしまった。
これらの理由が主な自転車での転倒理由だと思います。
そもそも乗っている自転車の整備不良(整備不良というかそもそも乗れる状態にない自転車)がこれらの転倒要因に悪い意味での相乗効果を与えているようにも思います。
今後も車に乗り続けたいという高齢者は多いが・・・
脳卒中や骨折の後遺症で障がいが残ってもこれまで通り車に乗りたいという高齢者は多くおられます。確かに法律的には運転免許証を持っていれば車の運転はできます。
しかし運転免許更新の際に認知機能もテストされるようですが「本当にこの方が更新できたのか・・・。」と感じる高齢ドライバーも多くおられるのが正直なところです。
運転免許を取り上げてしまい車を運転できなくしてしまうと高齢者の生活が成り立たなくなる可能性があるため、あまり厳しくできないというのも国の本音かもしれません。
しかし連日のように高齢者の悲惨な事故がテレビで放送されているのを見ると「ある程度の年齢で強制的に免許を返還するようにした方が良いのではないか」と感じるのは決して私だけではないないと思います。
特に車はエンジンで動くハイパワーなモビリティーであるためいったん事故を起こすと取り返しのつかない大事故になるのは自明の理だと思います。
したがって運転に自信があっても家族や医療従事者など身近な方から「もうそろそろ運転をやめたら?」と言われたことがあるようであれば素直にしたがった方が自分と周囲のためであることはどうぞ頭の片隅にはおいておいてください。
電動カートにのっている高齢者も増えているようです。
話は変わりますが電動カートってご存知でしょうか?ゴルフ場のカートより小さくコンパクトでご高齢の方が街中で乗っておられるのを見かけることもあるかもしれません。
最近、電動カートの性能も上がっているようで条件が合いさえすればオススメではありますが
- 乗ったことがないので操作方法がわからない
- かっこ悪い
- スピードが遅いレンタル費用が高い
- 取り回しが悪い
- 年寄りくさい
というような意見をよく伺います。
そして大柄で車に乗せたりするのも難しく利便性が悪いのがなかなか利用に繋がらない原因なのでしょう。
福祉用具業者の方から数日お借りして練習される方もいますが普段の生活での実用性はないと判断され利用を見送る方が多くおられます。
またせっかく介護保険を使ってレンタルしても実際に利用せずに家のガレージで物置になってしまっているケースも見受けられます。
ご高齢の方が操作をいちから学ぶには心理的ハードルが高いようです。
電動カートそのものの操作方法はご高齢の方でもそれほど難しいものではないのではありませんし、最近ではかなりスタイリッシュでオシャレな電動カートもどんどんラインナップされています。
参照)HONDA MONPAL
ちなみに電動カートは介護保険の適応(特例もあるが要介護2以上)であることが条件で毎月の負担額は1割負担で2500円前後の商品が多いようです。
このように介護保険を利用してレンタルできレンタル費用も月額で借りられるているので機会があれば試しに、試乗してみるだけはタダですのでお世話になっている福祉業車などにお願いして試乗されることをお勧めします。
電動アシスト自転車ってどんな自転車?本当に安全なの?
電動アシスト自転車のことを「電動自転車」と呼ばれる方もおられます。
日本の公道でナンバープレートをつけずに道路交通法違反になることなく走ることができるのは電動自転車ではなく電動アシスト自転車です。
電動アシスト自転車のアシストの部分はモーターによるアシストになります。
ちなみにアシストのない電動自転車で公道を走ると道路交通法違反で逮捕されてしまいますので、もし「電動自転車」が手に入っても絶対に乗らないでください。
私も普段の移動はもっぱら電動アシスト自転車です。
電動アシスト自転車はモーターによるアシストに対する規制がしっかりとかかっています。
たとえば止まった状態から10㎞までの速度では人力1に対して2のモーターによるアシストがかかり、10㎞を超えたあたりから徐々にアシスト力は弱くなって24kmでは完全にモーターによるアシストはなくなるという内容になっています。
アシストの内容はあなたが思っていたよりも少ないでしょうか。
しかしこれでも規制は緩くなった方で2008年までは人力とモーターによるアシストは1:1しかなかったようです。
2008年以前に発売された知り合いの電動アシスト自転車に乗せてもらったことがあります。
確かに今の電動アシスト自転車のようにアシスト力も強くはなかったことを覚えています。
現在のように0kmから10kmまでのモーターによるアシストが2倍になったのは子育て世代のお母さんによる要望もあるようですが、高齢者が増えたことで低速でのアシストをより高める必要があった背景もあるようです。
止まった状態から自転車を漕ぎ始める時に転けたり転けそうになったりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
あなたも経験上ご存知の通り自転車は漕ぎ始めに力が必要で、ここでしっかり踏ん張れないと転倒します。
逆にいうとここがスムーズに行けば自転車での転倒事故は減るのです。
漕ぎ始めにモーターによるアシストが十分にあり、ある程度スピードが出たらアシストが徐々に弱くなる。
しかも乗ったことがない方がほとんどの電動カートに比べ、基本構造は自転車と同じ電動アシスト自転車は高齢者にとってもとっつきやすく比較的安全なモビィリティーであると私は考えています。
そういう意味では電動アシスト自転車はご高齢の自転車や車の事故を減らす画期的なツールとなりえるのではないかと考えます。
ただ自転車はあくまでも2輪車でありどうしても止まった状態では自立できないという欠点が電動アシスト自転車においても二輪車である以上ウィークポイントとして残ることには変わりはありません。
そこで次は電動アシスト三輪車に焦点をあててお話したいと思います。
電動アシスト三輪車のススメ
私は電動アシスト三輪車に乗ったのは電動アシスト自転車を購入する時に試し乗りをさせていただいた時だけで、普段から乗っているわけではありません。
ですがこの試乗させていただいたときに驚いたのは自転車では自立できない止まった状態やほぼ止まったような速度でも自立できているという当たり前のことです。
しかし漕ぎ始めに転倒することの多い高齢者にとっては非常に有用な乗り物になりえるのではないかと思ったのを覚えています。
なにせ止まった状態でも転倒しない上に漕ぎ始めもモーターによるアシストがあるため非常に軽快です。
2輪の電動アシスト自転車に比べると大柄であり取り回しや置く時に若干の置き場を選ぶでしょうが自転車に乗れるような身体能力がある高齢者にとっては電動カートや車に比べれば大きな問題ではないかもしれません。
また三輪であるが故に荷物のカゴも大きくたくさんの荷物を載せることができ荷物の載せ下ろしもしやすいです。
荷物が多いから車しか乗れない・・・。という高齢者にとっても三輪の電動アシスト自転車は良いかもしれません。
最近はスタイリッシュな電動アシスト三輪車も出ているようです。
この記事を読んでいただいて今後、電動アシスト自転車の利用を考えられる方やそのご家族は、ぜひとも電動アシスト三輪車も視野に入れて検討されてみてはいかがでしょうか?
まとめ
自転車による転倒が原因で受傷しリハビリ加療をされる方や病気の後遺症で障害を負っても車に乗りたいと訴える方が増えています。
このような方がどうしても移動手段としての乗り物を選択されるのであれば、車や普通の自転車よりも電動アシスト自転車がかなり有用なツールになるケースもがあるのではないか。
私自身が普段より電動アシスト自転車に乗っていて感じておりこの記事を書いた次第です。
あなたが安全に日々の生活を送るために電動アシスト自転車(三輪車)の活用も視野に入れられてはいかがでしょうか。
みなさんが日々快適に過ごしてくだされば健康に関する分野の職域に従事する私にとってこれほど嬉しいことはありません。
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