はじめに
治療家として患者さんとの向き合い方を模索する中でとても参考になる考え方を提案している本がありましたのでご紹介いたします。
治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング)
私も患者さんを治したいという思いが強くなりすぎると治療効果が強く出ないことがあり焦ってしまうことがあります。
皆さんもそのような経験をされたことはおそらくあるでしょう。特に患者さんを少しでもよくしたいと考える治療者なら必ずぶちあたる壁でしょう。
私は理学療法士として患者さんを日々治療しており、考え方としては非常に勉強になります。本書を読む中で特に参考になった部分を引用し、学んだことをお話ししていきたいと思います。
やるべきことは、技術や知識の精度を上げることではなく、自分自身の将来の姿をできる限り具体的に、そして明確に描くこと
最初に、最も重要なことをお伝えします。
まず初めにあなたのやるべきことは、技術や知識の精度を上げることではなく、自分自身の将来の姿をできる限り具体的に、そして明確に描くことです。なりたい自分の姿と何のためにそこを目指すのか、その目的を明確に描くのです。
そしてその目的を実現するために「設定した目標を必ず達成する」という強固な意志を持ってください。
あなたがそう決意した瞬間から、すべての環境がその目標を達成するために動き始めます。
いきなり「ゴッドハンド」と呼ばれる先生方のようなトップを目指すのではなく、患者さん一人ひとりに寄り添った、自分の身の丈に合った営みからスタートし、できることをコツコツと「目標」に向かって諦めずに邁進していくのです。
これを実行し続ければ、あなたは必ずなりたい自分になることができます。
なぜか?やや哲学的な表現になりますが、それが私たちの存在している世界に組み込まれている、自然の意志(魂の方程式)だからです。
…
施術家として整体院を構えていくに当たって、症状を改善できるというのは当然のことながら必須条件になります。
辛い顔で来院された患者さんの症状を少しでも改善し、笑顔にできないようでは話にならないですよね。
が、しかし。第一章でも触れたように専門学校で資格を取って施術家になったものの、結果を出せずに不安を抱えている人たちが大勢いるという現実も忘れてはいけません。数多くの整体ハウツーセミナーやDVDの人気が高いことが、如実にそれを物語っているのではないでしょうか。
私は「資格」と「治せること」がイコールだと勘違いしている人が非常に多いことに驚きます。
資格というものはそのカリキュラムを修了した証であるとともに、その人物を判断するための要素の一つであることに間違いありません。
ただし、資格を取得したことと治せることは別であるということを、肝に銘じておいてほしいのです。資格が人を治すわけではないのです。
石井 薫. 治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング) .
患者さんを少しでも良くしてあげたい。という思いが強くなってしまうがゆえに、家族との時間も顧みず治療技術の勉強会に時間とお金を投資している人も方もおられるでしょう。
最近、少し落ち着いてきましたが、こんなことを言っている私自身もプライベートの時間を治療の勉強に相当費やしてきました。だからこそ余計に共感できるのが、
難関資格を取ったり治療のコースに出たからと言って治せるとは限らないということ
の部分です。
これは整体師に限らず理学療法士とて同じです。
せっかく貴重な時間とお金を割いたとしてもそれを目の前の患者さんに適応できるかどうかはまた別問題だということですね。
どうしても私を含め治療者は習ってきたことを患者に試そうとするばかりに、余計に治療の成果は下がることがあるなと感じています。
それはなぜなのか次の項目でみていきます。
治したいなら治すな
平たく言えば、施術をうまく進めるための「心構え」と言ったところでしょうか。
症状を抱えた患者さんに対して、「絶対に治さなければ」といった強迫観念に陥り、冷や汗をかきながら結果の出ない施術を繰り返した経験はありませんか?特にデビューして日の浅い先生であれば、言わずもがなでしょう。
これは、「治さなきゃ」という施術家の一方的な強い思いが、患者さんと共有する施術の「場」の空気を乱してしまう現象なのです。
この場合、結果に結びつかないことにますます焦りを感じ、状況をさらに悪化させてしまうパターンに陥ります。
では、どうすれば「場」を崩さずに、施術を進めることができるのでしょうか?
私たち施術家の役割は、患者さん本人が持っている潜在能力を活性化させ、自然治癒力が最も効果的に働く環境を整えることであり、患者さんが自らの力で症状を改善していくのを手伝うことです。
つまり、症状を治しているのは私たち施術家ではなく、患者さん本人であるということをしっかりと認識したうえで施術しなくてはならないのです。
これにより施術に対する気負いがなくなり、施術の「場」を崩すことなく効果の高い施術に繋げることができるのです。
私が尊敬する先生の一人に、奈良朱鯨亭(ならしゅげいてい)の別所先生がいらっしゃいます。
今から四〜五年前、友人から「おもしろい整体のHPがある」という話を聞き、覗きに行ってそのままファンになってしまいました。
先生のテキストには「整体の目的は、身体を生き生きした状態に戻すことだけではない。むしろ、自分の力でそのような状態を作り出せる人を増やすことだ」という、整体法の創始者と言われている野口晴哉氏の一文が書かれています。
私は、人間の持つ力、つまり「生命・魂の本質」といわれるものは、自然の意志である「創造・進歩・発展、そして成長」のエネルギーそのものだと考えています。
本書ではこのエネルギーを「自然エネルギー」と呼ぶことにします。そしてそのエネルギーは、最も有効にその力を発揮するために、肉体を常に良好に保とうとするのです。
それがいわゆる「自然治癒力」だと私は考えています。しかし現実は、日常のストレスや怪我、乱れた食生活、さらには一人ひとりの考え方や思い込みなどが原因となって、このエネルギーの流れが乱されるために、自然治癒力が本来の力を発揮しにくくなっています。
脳が発達した人間は、特にその傾向が強く出ます。「自分の力で常に自分自身の身体を生き生きとした状態に保つ」ということはつまり、「自然エネルギー」が滞りなく身体の隅々までいきわたり、その力を存分に発揮できている状態だと私は考えています。
では、さまざまな原因によってこのエネルギーの力が十分に発揮できず、症状を抱え込んでいる人たちに対して、私たち施術家は何ができるのでしょうか?
簡単にいえば「自然エネルギーの流れを妨げている、さまざまな原因を取り除いていく」ことだと私は考えます。
つまり私たち施術家の仕事は、エネルギーの流れを乱している原因を取り除き、その人の身体を自然エネルギーがスムーズに循環する環境を整えることなのです。
エネルギーが身体の隅々までいき渡り、その力を存分に発揮できるようになれば、自然に潜在能力が活性化し、「自然治癒力」が最も効果的に発揮される状態、つまり「自分の力で常に自分の身体を生き生きとした状態に保つ」環境が整うのです。
石井 薫. 治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング) .
「治したいなら治すな」はこの本のタイトルにもなっているフレーズです。
「治したいなら治すな」なんて何だか禅問答のような感じなのですが、治そう治そうとすると患者さん本人が持っている潜在能力を活性化させ、自然治癒力を阻害してしまい患者さんが自らの力で症状を改善していくのを手伝うことができなくなってしまうこと。
すなわち治療の成果が出にくくなってしまうということですね。
治したいという治療者の自我が強くなってしまうと著者のいう自然エネルギーを阻害してしまう要因になるようです。
これでは患者さんは良くなりませんし、二度と整体院にきてもらえません。
『治したいなら治すな』という題名の真意は、
治そう治そうと治療者が独りよがりにならないことである
ということですね。
私は今だにこのようなことを良くやってしまうためこの考え方を心したいとおもいます。
それにしてもこれって恋愛やお金儲けにも似ていますよね。
もっと女性にモテたいとギラギラすると余計にモテなくなった経験って皆さんないですか?
お金を儲けよう!って焦って投資をしてしまい結局お金を損してしまうような経験をされた方もおられませんか?
私はこの両方ともを嫌というほど経験しています。
それって結局自分本意が強くなりすぎてしまうから上手くいかないんでしょう。
これが恋愛やお金儲けにも止まらず治療の分野にも通用するということなんですね。
自分本意では物事はうまく運ばないのが世の常だとおもいます。
それでは多くの治療家が悩んでいるでしょう「どうすれば多くの患者さんにリピートしていくためにはどうすれば良いのか」
これについても本書にヒントがありましたので次でみていきたいとおもいます。
多くの方にリピートしていただくための心構え
当院に来院された方のうち九五パーセント以上(実際にはほぼ百パーセントになりますが)が、その後長期に渡って繰り返し来院し続けてくださいます。
もう七年くらい、毎月欠かさず通い続けてくれている方もいらっしゃいます。
なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか?私は、
「整体の本質は、精神的な部分と肉体的な部分の双方に寄り添っていかなくてはいけないのではないか、むしろ精神的な部分へのアプローチこそが、重要なのではないか」
と考えています。
昔から「病は気から」という言葉がありますが、私の院でも「来院される方が抱える身体の不調が、様々な精神的ストレスによるものである」というケースが非常に多いです。
特に私のようにエネルギーワーク(気功)を使った施術をしている院では、どうしてもメンタル部分にまで踏み込まざるを得ない機会が増えるのではないでしょうか。
自然療法院房そひぼしに来院される方のおよそ半分は、身体の不調と共に精神的な悩み・ご家族の心配事などの相談をしに来院されます。私自身「整体」という枠組みの中で、どこまで心の中に踏み込んで行ったらよいのかと、常に自問自答しながら施術をしていた時期がありました。
そんな折、心へのアプローチが、いかに重要かということを、私の心に刻みこんでくれた症例がありました。現在も毎月、メンテナンスで来院されているご家族がいらっしゃいます。
石井 薫. 治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング) .
体の不調は体が原因であるだけでなく心の中から生じていることってよくありますね。
私も薄々は感じているものの、心の中にまでは手をだせず体のところに着目しているのが正直なところです。
心の叫びに傾聴する
私たち施術家は身体からの叫びに耳を傾けるのは 得意ですが、心の叫びに耳を傾けようとする施術家は少ないのです。
相手のどんな話にも耳 を傾け、共感することは、身体の不調の原因にたどり着く大きなヒントになるばかりか、相手からの信頼を得られ、それがそのままリピートに 繋がっていくのです。
石井 薫. 治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング) .
相手の話に耳を傾けるということは相手の心の叫びに耳を傾けるということですね。
この地球に生まれた奇跡
私たちが住んでいるこの地球は「奇跡の星」といわれ、現在七二億八千万人という多くの人々が暮らしています。
しかしせっかく奇跡の星・地球に生を受けながら、その多くの人が痛みや苦しみ・不安を抱え、笑顔を忘れてしまったかのように生きている現実もあります。
森羅万象、私たちが認識できるすべてが宇宙という自然空間に存在し、その秩序の中で生かされています。つまり私たち一人ひとりに流れているエネルギー(魂)は、自然創造のエネルギーと同じであり、進化・成長しようとする自然の意志そのものだと私は考えています。
つまり、この一人ひとりに流れているエネルギーを、どのような形に変化させていくかは、すべて一人ひとりの意志によって決まるのです。
昔から「手当て」という言葉があるように、この自然創造のエネルギーは、人の身体を通して手から出ると言われています。
「整体」という職業はまさにその手を使って、多くの人たちを痛みや苦しみ不安から解放し、忘れてかけていた心からの笑顔と喜びを取り戻してもらうために、そして「地球」が「奇跡の星」としての本来の美しい輝きを取り戻すために自らのエネルギーを変化させていく、重要で必要不可欠な仕事であると確信しています。
石井 薫. 治したいなら治すな: リピート率95%の整体師が打ち明ける整体の現状とこの世の法則 (RCFパブリッシング) .
なかなか壮大なことを書いていますね。
私は本書に良く出てくる自然エネルギーというものについて深く考えたことがないので、あまり自分のエネルギーで患者を治療するというイメージは湧きにくいのですが、こういったエネルギーという概念からも患者さんの治療ができるようになりたいと感じました。
まとめ
本書はもうすでに患者さんの話はしっかり聞いているし!と思っている先生こそ必読かもしれません。
「自分が思っている聞く」と「患者さんが求めている聞く」では異なるかもしれませんしね。
相手の心をしっかり掴めばリピートしてくれる患者さんも増えることでしょう。
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