はじめに
脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)の患者さんは日本では約3万人と言われており1976年には特定疾病に指定されています。
その根本的な原因は未だに不明で身体の平衡を維持できなかったり筋肉の協調性のある運動ができなくなる運動失調を認める変性疾患です。
これから脊髄小脳変性症(以下、SCD)という病気とその症状、そしてこの疾患に対する主な治療である薬物療法と運動療法についてお話していきます。
脊髄小脳変性症ってどんな病気?
患者さんの2/3は非遺伝性(孤発性ともいう)の多系統萎縮症・皮質性小脳萎縮症と呼ばれ1/3は遺伝性のものと言われています。
ただし遺伝性の脊髄小脳変性症の中でも発症年齢が未成年であることが多いフリードライヒ病に関しては遺伝性であるものの遺伝子診断で特定の家計が判明するものではありません。
非遺伝性の多系統萎縮症は脊髄小脳変性症の中でいち番多く認めるもので中年以降に発症します。
自律神経障害やパーキンソニズムと呼ばれる筋肉のこわばりや緩慢な動作・手足の震えを認めます。
皮質性小脳萎縮症はパーキンソニズムや自律神経に関わる症状がみられることはほとんどないと言われています。
脊髄小脳変性症の症状
SCDは主に小脳の神経細胞が変性することにより起因する症状が主になります。
小脳などの萎縮が認められふらつきなどから始まって運動失調をきたします。
失調症状
小脳失調による歩行のふらつきなどの症状が認められます。体幹の安定性を高めるために必要なバランスを保つ筋力が低下し身体を制御する能力が低下します。
四肢の神経症状としては手足の震えがでることによりお箸を使ったりするような手指の細かい動きが難しくなります。
また構音障害といって口が思うように動かせない呂律(ろれつ)がまわらなくなり話をしにくくなるため患者さんの話を聞き取りにくくなります。
自律神経症状
寝た状態から起き上がったり立ち上がったりするときに血圧が低下してふらつく起立性低血圧がみとめられることもあります。
排尿や排便が思うようにできなくなったり反対に排尿が頻回になるといった排尿障害がでる患者さんもおられます。
パーキンソン様症状
遺伝性のないに認められる症状です。
パーキンソン病患者さんと同じような症状たとえば動作が遅くなったり表情が少なくなったりします。
錐体路症状
全身的に筋力の低下が生じそれに伴って筋肉が徐々にやせてきます。
また痙性と呼ばれる筋肉の緊張が足などに見られることもあり関節の動く範囲が狭くなる拘縮を起こしやすくなるため注意が必要です。
脊髄小脳変性症患者の治療法
SCDの方の治療に用いられる薬物療法と理学療法についてお話ししていきます。
薬物療法
SCDは先ほども述べたように現在のところ原因は解明されていません。
したがって治療法も確立されていないのが実情です。そのため薬物療法も特効薬がありません。
したがって対症療法が中心になりますが運動失調に対する薬物としてはセレジスト・ヒルトニンが投与されます。
足の筋肉の突っ張りにたいしてはテルネリンが投与されることもあります。
運動療法
四肢・体幹の筋力低下を少しでも防ぎベッドからイスへ乗り移ったり、歩いたりするような動作能力を維持させ、介助量が増えることを防ぐ目的で理学療法を実施します。
特にSCDの症状としてみられやすい運動失調は筋力が低下することで症状が強くなるため筋力の低下を防いであげることはとても重要です。
また病気の進行が進むにしたがいSCDの自律神経症状からくる起立性低血圧だけでなく臥床期間が長くなることによる起立性低血圧も顕著に認められるようになります。
そのため日中は出来るだけベッドから離床させてあげ可能な範囲で座ったり立ったりする練習などを行ってあげることが非常に大切になってきます。
基本動作の中でも歩行動作能力の低下にともない徐々に歩行に対する意欲も低下しがちで廃用の要素も加わって動作能力の低下が進行しやすいのも特徴です。
まとめ
筋力やその筋力を効率的に使うための協調性を維持させるためにも立位や歩行動作を行うだけの動作能力がある患者さんにおいてはこれらの動作練習を行うことは非常に大切です。
SCDではこれまでにご紹介したように様々な症状を認めるうえに原因不明の難病ということもあいまって患者さんご本人のみならず患者さんを支える家族にとっても大変です。
患者さんや家族だけでなく専門職の力も頼りながらこの病気と向き合っていくことがとても大切になってきます。
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