リハビリ・健康

有酸素運動は呼吸の病気に有効って本当?

はじめに

呼吸器疾患のある方の特徴でもある痩せやすい理由や最低限着目すべき血液検査データ(バイオマーカー)の項目に加えおすすめの有酸素運動についてお話していきます。

呼吸器疾患になると痩せやすい理由

呼吸器疾患の患者さんは相対的にやせている方が多いです。

これは呼吸をすることにかなりの努力を要するためエネルギーの消耗が激しく息苦しいがゆえに食事も十分に食べることができないからです。

他にも呼吸器疾患になると食事量が減ってしまう理由として・・・

・食べ物を飲み込む瞬間に息をとめないといけないので食事をとりにくいため。

・食事をすると胃が横隔膜を押し上げて呼吸を圧迫するため。

・上記の理由から食べることに対する意欲の低下すること。

これらの理由が挙げられます。

代表的な呼吸器疾患

ここではCOPDと間質性肺炎と呼ばれる呼吸器疾患についてご紹介したいと思います。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)って?

COPDの主な原因は喫煙です。

肺胞は健康な状態であれば軟らかく柔軟性があるものですがCOPDの患者さんはタバコの煙により肺胞に炎症が生じ続けた結果、柔軟性が乏しくなってしまいます。

柔軟性のなくなった肺胞はツブれてしまうため(これを肺胞の虚脱といいます)息を吐けなくなるという症状がみられます。喫煙などによる酸化ストレスとこれに起因するTNF-α、IL-6、IL-8などの炎症性サイトカインを介した全身性炎症疾患です。

COPDの症状としては息を吸うのは吸えるのですが、息を吐くことができず吐ききれないまま再び息を吸うことになってしまうため非常に苦しい呼吸になるという特徴があります。したがって1秒間に吐ける息の量が大幅に減るという特徴があります。
COPDはタバコを吸う方の約1割が発症するといわれています。

呼吸時の消費エネルギーは健常者で36-76kcal/dayにあるのに対しCOPDの患者さんでは430-720kcal/dayと8倍以上のエネルギーを消費してしまうのです。

これはCOPDの患者さんの絵ですがエネルギー消費が激しいのでこのようにガリガリに痩せてしまうのです。(このような外見をpink pufferとも呼ばれます。)

 

COPDのマーカーって?

COPD の患者さんから血液検査することによって確定診断あるいは病状を完全に把握できるバイオマーカーは今のところまだ見つかっていません。

それでも栄養不良の指標ともなる総たんぱく(TP)とアルブミン(Alb)といった指標は呼吸器疾患でなくても運動する上で把握しておく必要があります。

栄養不良は主にカロリー不足またはタンパク質不足のことをいいます。

栄養不良になってしまう理由としては、食事が取れなくなってしまうこと。代謝・呼吸障害が原因で栄養不良となります。

総たんぱくとアルブミンはこれらの栄養不良の有無を確認できる指標となります。基準値は下記の通りです。

総たんぱく(TP):6.5~8.0g/dl

アルブミン(Alb):3.9~5.8g/dl

間質性肺炎って?

日本において間質性肺炎(かんしつせいはいえん、interstitial pneumoni)は特定疾患に分類されており、その中でも特発性肺線維症(IPF)及び急性間質性肺炎(AIP)については難治性です。

COPDは息を吐けないのが特徴でしたが、間質性肺炎は息を吸いにくくなります。そのため息を吸っても吸った感じがせず常に息苦しいのが主な症状です。また肺の持続的な刺激によりセキがみられ、それは痰を伴わない乾性咳嗽です。(痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため)肺線維症に進行すると咳などによって肺が破れて呼吸困難や呼吸不全となり、それを引きがねとして心不全を起こしてしまいやがて死に至ることもあります。

聴診器を当てて肺音をきいたときに fine crackle(ファインクラックル)と呼ばれるパチパチという捻髪音(ねんぱつおん)をきけることがあります。

fine crackleはマジックテープをはがす音に似ているため、マジックテープのメーカー(ベルクロ社)にちなんでベルクロラ音とも呼ばれます。また呼吸器障害を反映してばち指がみられることもあります。

レントゲン写真ではすりガラス様陰影 ground-glass opacity)がみられます。

進行すると肺が線維化し蜂巣肺(ほうそうはい)と呼ばれる蜂の巣のような肺がレントゲンでも確認できます。

呼吸検査では%肺活量の低下が認められます。(%肺活量(%VC)は気管支をスムーズに空気が流れるかという指標。)

また間質性肺炎は基本的に拘束性換気障害を呈するためCOPDなどの閉塞性肺疾患を合併していない限り一秒率の低下はありません。(力を強く息を吐き出したときに呼出される空気量のうち最初の一秒間に吐き出された量(これを1秒量といいます)の割合をいいます)

間質性肺炎の血液検査項目としてはSP-A、SP-D、KL-6の上昇があり、これは炎症の活動度の判定や治療効果の判定に信頼性が高いマーカーになります。

進行性で治療に抵抗性のものでは数週間で死に至る方もある一方で慢性的に進行した場合は10年以上生存する方も多くおられます。

間質性肺炎のマーカーって?

先ほどご紹介したようにCOPDと違い間質性肺炎のマーカーは存在します。

SP-A(肺サーファクタントタンパク質-A):43.8ng/mL以下

SP-D(肺サーファクタントタンパク質-D):110ng/mL以下

KL-6(シアル化糖鎖抗原):500U/mL以下

これらは肺胞上皮の障害、肺胞上皮の血管透過性の程度を反映する値になります。

呼吸器疾患を持つ人に適した運動

呼吸器疾患を持つ方に適した運動は有酸素運動です。有酸素運動は負荷量が軽いため長く続けることの出来る運動です。

有酸素運動の方法はたくさんありますが、ここでお勧めしたい運動方法は自転車エルゴメーターという器具を用いた有酸素運動です。

*下の写真でいうと自転車のベダルがついた器具です。

スポーツジムや病院などにおいてある自転車エルゴメーターはかなり低負荷な強度から設定できるため持続した運動には非常に有用なツールになります。

「わざわざ自転車エルゴメーターをこぐくらいなら普段の生活の中で自転車に乗ったり、歩いたりしたらいいんじゃないの?」とおっしゃる患者さんも多くおられます。

しかし呼吸器疾患の患者さんにとって日常生活は負荷量の多い運動になってしまうことが多く長い時間続けて運動できないため結局運動量が減ってしまうということになりがちです。

したがって低負荷量で頑張らなくてもよい有酸素運動は特に呼吸器疾患を持つ患者さんにとって非常に有効であるということは知っておいていただきたいと思います。

運動量が減ると病気との相乗効果でどんどん体の機能が低下するのを防ぐためです。

自転車エルゴメーターを利用する場合は出来るだけ軽い負荷量でしんどいと感じない程度の負荷量からはじめ徐々に時間を延ばしながら無理のない範囲で実施していく必要があります。

まとめ

代表的な呼吸器疾患や運動するにあたり最低限着目すべき血液検査データ(バイオマーカー)の項目そして自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動の有効性についてお話ししました。

呼吸器疾患は内部障害であるため周囲から見て分かりにくく理解が得られにくいことから、ひとりで苦しさを抱えてしまう傾向があるように感じています。

身近にいる方に自分が感じている苦しさをきいていただくことも精神面を安定させる上では非常に大切であることを最後にお伝えしておきます。

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コメント

    • nappon3
    • 2017年 8月 19日

    更新頻度が高いっすね!勉強になります!

      • 井上 たかひろ
      • 2017年 8月 20日

      先生。ありがとうございます!
      お忙しいのに読んでくださり感謝です!
      今後ともよろしくお願いします

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