はじめに
膝をはじめとする関節に痛みがない方の歩行は非常に効率的でスムーズで効率的です。
これから効率的な歩行と非効率な歩行の見分け方について説明していくのですが、まずは正常歩行について簡単におさらいしたいと思います。
体に負担の少ない効率的な歩行が行われているかどうかを知るために歩行観察を通し歩行の推進力が最も生じている場所を歩行観察を通して特定し歩行を分類する方法について説明します。
そして最後に歩行を詳細に評価する手順についてお話していきます。
正常歩行をおさらいしましょう
まずは正常歩行についておさらいしていきたいと思います。
あくまでも正常歩行ですので人によって大いに異なるということは言うまでもありません。
しかしこの正常歩行を相ごとに分けて把握しておくことは非常に重要です。
ここではジャクリーン・ペリーが定義した歩行周期を8相に分ける考え方にそって説明していきたいと思います。
立脚期:Stance(60%)
立脚期は歩行周期中の足が地面に接地している時期になります。
歩行周期はイニシャルコンタクトから始まりイニシャルコンタクトで終わります。
立脚期は歩行周期全体の60%をしめます。
イニシャルコンタクト(IC;Initial contact 初期接地) 0%
歩行周期の終わりと始まりであるイニシャルコンタクトの目的としては衝撃吸収の準備になります。
イニシャルコンタクトにはもう1つ別の名前がありヒールストライク(heel strike)とも呼ばれます。
しかしこの呼び方では、たとえば前足部のほうが踵よりも最初に接地するような歩行では矛盾が生じることから最近ではイニシャルコンタクトと表現されることが多くなっています。
ローディングレスポンス(LR;Loading response 荷重応答期)0%〜12%
ローディングレスポンスはイニシャルコンタクトが始まりで反対側の足底が床から離れた瞬間が終わりになります。
このローディングレスポンスの目的としては、
- 衝撃の吸収
- 前進推進力の保続
- 体重負荷:体幹の安定性
になります。
またローディングレスポンスは全歩行周期の中で最も筋活動の高い時期です。
そして遠心性収縮の筋活動が多いという特徴のある歩行期間になります。
筋力、固有受容感覚、協調性がより求められるのがローディングレスポンスになります。
そのため中枢神経疾患・運動器疾患を問わず歩行中の問題が生じやすい時期でもあります。
またこのローディングレスポンスは1回目の両脚支持期(IDLS)が生じる時期にもなります。
ミッドスタンス(MSt;Mid Stance 立脚中期)12%〜31%
ミッドスタンス(前半)
ミッドスタンス(後半)
ミッドスタンスは反対側の足が地面から離れた瞬間から観察肢の踵が床から離れた瞬間をいいます。
この相の役割としてはしっかりと地に着いている足を支点とした前方への動き、脚と体幹の安定性を確保することです。
ターミナルスタンス(TSt;Terminal Stance 立脚終期)31%〜50%
ターミナルスタンスは観察肢の踵が床から離れた瞬間から始まり反対側のイニシャルコンタクトが終わりになります。
このターミナルスタンスが終わるとともに単脚支持が終わりとなります。
プレスイング(PSw;Pre Swing 前遊脚期)50%〜62%
プレスイングは反対側のイニシャルコンタクトから始まり終わりは観察している側のつま先が床から離れる瞬間までをいいます。
このプレスイングは名前にスイング(遊脚期)とありますが、まだ床と足底が接地しており立脚期に含まれます。
またこの相は2回目の両脚支持期(TDLS)のある相でもあります。
遊脚期:Swing(40%)
歩行周期中の足が地面から離れていてスイングにより脚が前に運ばれている時期です。
イニシャルスイングは脚が地面から離れたときが始まりになります。
遊脚期は歩行周期全体の40%をしめます。
イニシャルスイング (ISw;Initial Swing 遊脚初期)62%〜75%
観察肢のつま先が床から離れた瞬間から始まり両側の下肢が矢状面で交差した瞬間が終わりとなります。
この相の役割としては床から足を離すこと、そして観察肢を前に運ぶことになります。
ミッドスイング (MSw;Mid Swing 遊脚中期)75%〜87%
ミッドスイングは両側の下腿が矢状面で交差した瞬間が始まりで遊脚肢の下腿が床に対して直角になった瞬間が終わりになります。
この相の役割としては、観察肢を引き続き前に運ぶこと。
そして観察肢の十分なtoe clearance(トゥクリアランス)の確保になります。
ターミナルスイング(TSw;Terminal Swing 遊脚終期) 87%〜100%
ターミナルスイングは観察肢の下腿が床に対して直角になった瞬間から始まり観察肢の足が床に触れた瞬間(イニシャルコンタクト)が終わりになります。
この相の役割としては観察肢を前に運ぶことに加え観察肢の立脚相の準備になります。
推進力から歩行のタイプを分類する方法について説明するよ
歩行の推進力がどこから生じているかで歩行を分類する考え方についてご紹介していきます。
かなり大雑把ですが歩行のタイプを下記の3つに大きく分類します。
- Trunk walker(トランクウォーカー:体幹歩行)
- Pelvic walker(ペルビックウォーカー:骨盤歩行)
- Leg walker(レッグウォーカー:足歩行)
それぞれの歩行の特徴を細かく見ていきます。
トランクウォーカー: Trunk walker 体幹歩行
骨盤の動き(PNFでいう骨盤パターン)を使用した歩行になります。
歩行の中でもこのトランクウォーカーが1番効率的であり、この歩行を目指して治療をしていく必要があります。
ペルビックウォーカー:Pelvic walker 骨盤歩行
骨盤の回旋が推進力になっている歩行です。
振り出すほうの下肢側に骨盤が大きく前方回旋します。
レッグウォーカー: Leg walker 脚歩行
股関節の屈曲が大きく下肢の振り出しが推進力になる歩行を指します。
具体的には骨盤の動きよりも股関節の屈曲が目立つ歩行です。
まるで兵隊のような歩き方といえばイメージしやすいでしょうか。
ただ全ての歩行をここでご紹介した3つの分類に確実に当てはめることは難しいと思います。
このような場合もっとも歩行の推進力が生じていると思われる部分を歩行を観察することで捉えて先ほどご紹介した3つのタイプに最も近いものを選んでみてください。
これらの3つの歩行の分類を知っていただいたうえで、これから歩行の具体的な評価方法についてお話していきたいと思います。
歩行を評価する手順を紹介するよ
- 歩行を見るときには推進力はどこから生じているのかを見る必要があります。
骨盤から?下肢?それともそれ以外?というように推進力どこからが生じているのかを歩行を観察することで特定します。 - 脊柱または骨盤の異常な運動が(軸から逸脱)が生じていないか?
- 足底の初期接地でイニシャルコンタクト(heel strike)で足底接地の音は大きすぎないか?効率的な歩行状態であるほど初期接地の音は小さい。
- 患者の横を実際に歩き患者さんの骨盤触診します。実際に骨盤を触診してみてどのような動きが確認されるか?
- 腕を組んで歩くとどのように歩行が変化するか?上肢での代償がなくなると機能障害がより明確になるため腕を組んでの歩行も評価します。
- 患者の寝返り動作のパターンと歩行のパターンにはどのような関連があるか
まとめ
歩行は連続性のある動きであり見る視点も本当にたくさんあるため歩行を評価するということは大変難しいものです。
私が普段実践している比較的わかりやすい歩行の見かたである「歩行の推進力がどこから生じているかで歩行を分類する方法」について比較的臨床経験の少ない理学療法士の方に向けてお話してきました。
これは歩行動作だけに限りませんが動作の特徴を大きく捉えることは本当に重要です。
ぜひこの記事を参考にしていただき普段の臨床で活用していただければと思います。
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